ポーランドの流行語大賞(2013)

 
流行語大賞といっても、日本のような大げさなものではありません。毎月、ワルシャワ大学ポーランド語研究所とポーランド語協会が発表している、新聞や雑誌などのメディアで多く使用された「時の言葉(słowa na czasie)」から、最も象徴的な単語を選んだものです。 先日1月6日に発表された「2013年の時の言葉」は「Gender (dżender)(ジェンデル)」です。 う~ん、このGenderはちょっと説明が難しいのですが、本当に単純な言い方をすれば「男女平等思想」といったところでしょうか。ポーランドではこのGenderという言葉は、本来の意味とは違い、1つのイデオロギーのような形として使われることが多いようです。これは、EUの政策や法律上の性差撤廃の方針に対し、カソリック信者が大半のポーランドが強く反発していることに因ります。「時の言葉」のホームページでも、共産主義時代には「それは全てロシア人のせいだ」としていたように、現在は「それは全てGenderのせいだ」と言い換えてもしっくりするほど、ポーランドとしてはこの論争にイラっときているとのことです(笑)。 「時の言葉」は毎月選ばれているので、2013年の他の言葉を以下、見てみましょう。 1月に選ばれた言葉は「związki partnerskie(ズヴィヨンスキ・パルトネルスキェ)」でした。「シビル・ユニオン」を意味するこの言葉が選ばれたのは、1月の議会でRuch Palikot(ルフ・パリコット)党とSLD党が提出したシビル・ユニオンに関する法案が、国会で否決されことからです。カトリック教国であるポーランドでは同性愛や同性間での結婚について反感を持つ人も多いためにこの結果になったのでしょうか。「同性カップルでも夫婦といえるのか」「同性でも家族は作れるのか」という議論が盛んに行われました。 2月の言葉は「abdykacja(アブディカツィア)」、3月は「konklawe(コンクラーヴェ)」でした。これはそれぞれ「退位」と「ローマ法王選出選挙」を意味します。2月に前法王ベネディクト16世が、高齢を理由に退位表明をしました。基本的に法王は亡くなるまではその地位についているため、この異例の退位は論議をかもしました。その後3月のコンクラーヴェで新法王フランシスコが選出され、即位しました。 8月は「kibol(キボル)」、フーリガンを意味する言葉です。これは8月、サッカーチーム・ルフ・ホジュフの試合のためにグディニアに来ていたフーリガン達が、ビーチでメキシコ人の海兵たちと乱闘になり、警察が出動して大騒ぎになったことから来ています。 11月の言葉は「虹」を意味する「tęcza(テンチャ)」でした。11月11日の独立記念日の日、ワルシャワのパレードに集まった数百人の右翼らが町中を練り歩き、爆竹を鳴らしたり公共物を破損したりした後、救世主広場にある虹のモニュメントに火をつけて炎上させました。虹はセックスマイノリティの象徴でもあり、常々このモニュメントの存在を快く思わない人もいたためにこうなったのかもしれません。 参考:「時の言葉」