アントニン 狩猟の館 Pałac myśliwski

ポーランドのヴィエルコポルスカ県、ポズナンから車で南東に2時間ほど行ったところにアントニン(Antonin)という小さな村があります。緑が多く湖もあるその村の中に建っているのが木造の狩猟の館(Pałac myśliwski)です。

この建物はカルル・フリードリッヒ・シンケルの設計で1822年から24年にかけてポズナン大公国総督であったアントニ・ヘンリク・ラジヴィウ(Antoni Henryk Radziwiłł)公の夏の館として作られました。アントニンという地名は彼の名前を取ったものです。

ラジヴィウ公は芸術、特に音楽に造詣が深く、チェロの名手でもありました。ゲーテやパガニーニ、ベートーヴェンとも親交がありました。彼は1827年と1829年の2度に渡りフレデリック・ショパンをこの館に招いています。ショパンはここでラジヴィウ公の娘ヴァンダにピアノを教えていたほか、ラジヴィウ公のために前奏と華麗なるポロネーズ ハ長調作品3”を作曲したほか、彼が唯一作曲したピアノ三重奏曲をラジヴィウ公に献呈しています。

戦後この建物は共産主義政権の所有物となり荒廃、その後ポーランドの作家で音楽評論家であったイエジィ・ヴァルドルフ(Jerzy Waldorff)氏のイニシアチブにより1975年から78年にかけて修復されました。

現在はホテルになっており、ショパンが滞在したといわれている33番の部屋にも宿泊できるほか、一室が小さなショパン博物館になっており、ショパンとこの館に関する資料を見学することが出来ます。また毎年秋には“秋の色のショパン (Chopin w barwach jesieni)”というフェスティバルが行われ、国内外の演奏者達が出演しています。

アントニンの狩猟の館については2016年NHK「名曲アルバム」や2019年TBS「世界の窓」で放送されました。機会があればぜひご覧ください!