ご無沙汰しております、りんごです。ワルシャワは夏時間になって日がのびました。もう春ですね。はやくこの重いコートを脱ぎ捨てたいものです。
さて、私が住んでいるのは社会主義時代に作られた高層アパートが立ち並ぶ団地です。そういう場所なのでいろいろな人が住んでいるのですが、特に多いのがもう何十年も住んでいるお年寄りの人たちです。というわけでうめちゃんのお散歩に行くと、そんなお年寄りが愛犬を連れてお散歩しているところをよく見かけます。何回も顔を合わせていれば自然に話すようになり、時には一緒にお散歩することもあります。というわけで今回は私のお散歩仲間の人たち&ワンコについて書いてみたいと思います。
1年半くらい前に知り合ったのは、黒い小さな雑種のワンコをつれた背の高い白髪の紳士でした。ワンコの名前を聞いたら“ラルゴ”だったのと、ワンコが拾われたのがとある野外コンサート会場だったということや、去年の秋にはショパンコンクールの話で大盛り上がりしたのでもしかしてクラシック関係の人かしらと思っていたのですが(“ラルゴ”はクラシックではゆったりとという意味の速度記号)、最近になって実はとある劇場の舞台監督さんで、オペラを手がけたりもしているということを初めて知ったのでありました。この紳士はポーランドでは”radiowy głos”(ラジオ的な声)と言われるような素敵な低い声でとても美しいポーランド語を話すので、いつも一緒に話すのが楽しみなのです。
もうひとり会うのが楽しみなのは、黒い雑種の老犬と白い小さなテリア犬を連れた老婦人。老犬はいつもかなりゆっくり歩いていたので年齢を聞いてみると、なんと25歳(人間だと100歳超えてる)!!!まーよくここまで長生きしたもんだ、と思っていたのですが、3ヶ月ほど前に会った時にテリアしか連れていなかったのでどうしたのか聞いてみると、病気で死んでしまったとのこと。実は私、祖父母が亡くなったときはこっちにいたので何だか実感がわかなかったのですが、この老犬が亡くなったと聞いた時は思わず涙が出ました。。。その後その老婦人と会うことがあまりなかったのですが、2週間くらい前にうめちゃんとお散歩していると、小さな黒い雑種のワンコが寄ってきました。見かけない子だけど、誰の犬だろう・・・と思って顔を上げると、そこにはあの老婦人が。彼女は老犬が亡くなった後、寂しさのあまり泣き暮らしていたそうで、それを見た娘さんとお孫さんがシェルターでワンコを選んできてくれたとのこと。「やっぱり犬のいない生活は耐えられないわね」と笑顔で言っていたのが印象的でした。実はテリアは娘さんの犬で、忙しい娘さんのかわりに世話することが多かっただけのことらしく、老犬が亡くなった後はひとりぼっちだったんだそうです。その新しい子もなつっこくてお行儀のよい子で、どっちに対しても「ほんと良かったね」と言ってあげたくなりました。
そのほかにも会うたびにうめちゃんに大量のおやつをくれるおじさん。この人はある朝のお散歩で「今日は私の60歳の誕生日なんだ!一緒に祝おう!」といっておもむろにコートの中からウオッカの瓶を出してすすめてくれました(朝7時です)。もっさもさのヨーキーを連れているおばあちゃんは戦時中からこのあたりに住んでいたという人で、「あんたねー、戦時中なんてね、ここにでっかい壁が立っててね、レンガの隙間からパンとか投げ入れたもんだよ」というまるで歴史映画さながらの話をしてくれたりしました(私が住んでいるのはユダヤ人ゲットーがあった地域です)。このおばあちゃんは最近は足が不自由になったとのことで、息子さんがお散歩をしていますが、いつかまた戦争中のお話をきちんときいてみたいな、と思うのです。
これまで住んできた場所では近所づきあいもなく、ただ「異国でひとりぐらしをしている」という実感しかなかったのですが、このアパートに住み始めてうめちゃんとお散歩をするようになってからは「地域の輪」というか、「地域共同体に入れてもらってる」という感じがするようになりました。やっぱワンコは最高のコミュニケーションツールだよね、と思わずにはいられないのであります。
(写真はおひるね中のうめちゃんです)