ポーランドでは、11月30日の聖アンジェイ(św.Andrzej)の日の前夜をアンジェイキ(Andrzejki)と呼び、占いをする習慣が残っています。
なぜこの日に占いが行われるようになったかは定かではありませんが、スラブ諸国では秋から冬が結婚シーズン(ポーランドでは1月1日~謝肉祭)と見なされていたこと、秋の収穫後に屋外作業から屋内作業に変わることで、女性たちが糸紡ぎや刺繍などの共同作業で集まることが多くなる、といった季節的な背景があるようです。
何れにしてもポーランドでは、16世紀半ばには文献にも登場するほど、古く伝統的な習慣であることは間違いなく、当初は未婚の女性たちが結婚の時期や相手を占う一大イベントだったのです。
それではいったいどのような占いの仕方をするのでしょうか?
最も代表的なものは「蝋燭占い」とでも呼べばいいでしょうか。用意するのは「鍵(取っ手の方に穴が開いているもの」と「蝋燭(何色でも良い)」、そして適当な容器に入れた「水」です。そして溶けた蝋を、鍵の穴の開いた部分を通して、水の中に流し込みこます。蝋は水の中で固まるので、その形によって未来を占うというわけです。
中世では蝋燭といっても蜂の巣から取れる蜜蝋を使い、一気に水の中に流し込んだようです。ちなみに鍵は古ければ古いほど良く、穴も大きければ大きいほど良いそうです。また、本来はこの蝋の塊を壁に投影して、その形で占いを行いましたが、最近は塊そのものの形で占うことが多いようです。ただし、実際にやってみるとわかりますが、蝋の塊は抽象的過ぎて、何の形に見えるの判定はなかなか難しいものです。参考までに代表的な形の意味を下記しておきます。
花: ラッキーなサプライズ
星: 幸福、成功
ハート: 恋人現れる。すでに恋人がいる場合は妊娠
馬: 軍人(女性が占った場合は結婚する男性の職業、男性なら将来の職業)
狐: ネガティヴ、マイナス(狐は中世では悪魔のシンボルとされた)
フクロウ: 何か悪いことが起きる
犬や猫: 結婚を白紙に戻すべし
*占いの結果があまり良くなかった場合、蝋の塊を土の中に埋めること。災いを避けることができるそうです。
この他にも「靴占い」というものがあり、これは後ろ向に右足の靴を投げ、つま先の向いた方角が将来の花婿の住む場所、またはやって来る方角を示すというものです。この「靴占い」には別のバージョンもあって、靴の向いた方角が玄関ならば、近い将来お嫁に行く(結婚する)とか、複数の人でやる場合には、靴が玄関に近い順に結婚する、男性の場合には旅に出る、といった見方もあるようです。
アンジェイキは既婚女性や男性を含め、1種のパーティー的な感覚で各々の運勢や未来を占う日でしたが、現在ではあまり占いは行われることは無く、普通にパーティをする日になっているようです。