ポーランド語はロシア語などと同じスラヴ語派に属しますが、キリル文字ではなく、英語などと同じラテン文字を用います。同じスラヴ語派なのになぜ違う文字が使われているかというと、ロシア、ウクライナなどキリル文字を使う国々は、かつてイスタンブールに主教座があった東方正教会に、ポーランド、チェコ、スロヴァキアはローマに主教座のある西方教会に帰属していたという歴史的・文化的背景があるからなのです。
基本的にはローマ字読み:
ABCは単体ではそれぞれ、「アー」、「ベー」、「ツェー」と読みますが、単語は基本的にはローマ字読みになります。
例えば、ダイヤモンド(英語:Diamond)のポーランド語は「Diament(ディアメント)」と読み、心理学(英語:Psychology)は「Psychologia(プスィホロギア)」となります。下記に挙げるようないくつかの特殊な読み方さえ覚えてしまえば、基本的にはローマ字読みで問題ありません。
特殊な読み方;
「CH」はハ行になります。中国は「CHINY(ヒヌィ)」、病気は「CHOROBA(ホロバ)です。ただし「CH」ではなく単体の「H」の場合もハ行になるので注意が必要です。発音としては「CH」の方が強く、若干息を吐き出す感じになります。
「J(ヨット)」、「Y(イグレック)」は共に日本語のヤ行になります。日本を意味する「Japonia(ヤポニア)」、グッドを意味する「Dobry(ドブリィ)」。両者の違いは、「Y」の方が若干長く発音されます。ポーランド人はスペルを確認する時に「短いイ(J)」、「長いイ(Y)」と区別することもあります。「Y」は多くの場合、語尾に使われます。
W(ヴー)はワ行(ヴァ行)になります。ただし、厳格な「ヴ」というよりは「フ」に近い発音でしょうか。ワルシャワは「Warszawa(ヴァルシャワ)」となりますが、大きく口を空ける「ワ」ではなく唇を閉じた「ヴァ」に近い「ワ」と理解すれば良いでしょう。映画監督の「WAJDA」氏は「ワイダ」と表記されますが、正しくは「ヴァイダ」監督となります。通常のワ行はポーランド語の特殊文字の「Ł(エウ)」が使われます。
さらに特殊な読み方:
「J」はヤ行になると説明したましたが、それでは英語の「ジェー」にあたるアルファベットはどれかというと… 実は「ジェ」と発音される組み合わせは何通りもあるのです。子供たちを意味する「DZIECI(ジェチ)」、物を意味する「RZECZ(ジェチィ)、土地や土を意味する「Ziemia(ジェミア)」、蛙を意味する「ŹABA(ジャバ)」などなど。それぞれの発音の違いを日本語で表すことは非常に困難です。強いて書くとすれば、日本人が一般的に発音する「ジェ」は「ZIE」に近く、「DZIE」は「D」を、「RZE」は「R」の音を「ジェ」の前につけ、「(ドゥ)ジェー」、「(ル)ジェー」と早口に発音してみてください。違いが何となくわかります。
この他にも「CZ(チ)」、「CI(チ)」、「Ć(チ)」、「SZ(シ)」、「SI(シ)」、「Ś(シ)」などがありますが、「ジェ」ほどの違いはないので、感覚的にローマ字読みをすれば大丈夫でしょう。
ポーランド語の特殊文字:
ポーランド語には英語のA-Z以外に特殊なアルファベットが使われています。それぞれ単体では、Ą(オン)、Ć(チ)、Ę(エン)、Ł(エウ)、Ń(エニ)、Ó(ウ)、Ś(エシ)、Ż(ジェト)、Ź(ジェト)と表記・発音されます。例えば「PĄCZEK(ポンチェック)」、「PIĘKNO(ピエンクノ)」、「PÓŁNOC(プウノツ)」、「PAŹDZIELNIK(パジジェルニック)」、「PEWNOŚĆ(ペヴノシチ)」などです。お気付きの通り「Ą」、「Ę」、「Ó」は母音として使われます。「Ń」は「ン」と「ニ」の中間ぐらいの発音が正確でしょうが、カタカナ表記するのは「ニ」の方が良いかもしれません。「GDAŃSK」や「POZNAŃ」が、「グダニスク」、「ポズナニ」とガイドブックなどで表記されるのはこのためです。また、「Z」は上に何もない「Z」を含め3種類あります。これも無理やり発音を説明するとすれば、「Z(zet)」、Ź(ziet)、Ż(ziet)となりますが、最後の「Ż」は「Ź」より、こもった「ziet」といえばわかりやすいでしょうか。
このようにちょっととっつきにくい特殊文字ですが、その分「Q(クー)」、「V(ファウ)」、「X(イックス)」は外来語として表記される以外はポーランド語では使われません。
最後に、ノーベル平和賞を受賞した元ポーランド大統領のワレサ氏のスペルは「WAŁĘSA」です。日本では「ワレサ」という言い方が定着してしまっていますが、ポーランド語では「ヴァウェンサ」と発音します。ポーランド人に「ワレサ」と言っても全く通用しませんから、この際正しい発音を覚えてしまいましょう!