一般のポーランド人が想像できる日本という国は、大別すると二つの姿があるようです。一つは桜の花、芸者、侍などの歴史文化的な面、もう一つは経済大国としての現代の姿です。私が日本学科に入学する前はこれら一般のポーランド人が抱いているイメージと私にとっての日本の印象とは、さほど変わりのあるものではありませんでした。ポーランドで見た日本映画、また日本関係のTV番組等で垣間見る文化、習慣、行事の相違には強い興味を惹かれました。しかし、映画を見たからといって日本についての詳細な情報が得られるわけではありませんでした。私にとって日本学科への入学は日本語そのものにも大きな興味があったからです。きっかけはどうであれ、日本への興味を通して、私自身の視野を広げることになったことは間違いありません。
クラコフでの日本学科の勉強は思ったより厳しいものでした。文化や歴史を理解し、固定観念を払拭することにも成功しました。しかし、それらの多くは知識や理論であり、自ら日本というものを実感できるものではありませんでした。4年生になってたった1ヵ月半ですが、日本へ滞在するチャンスに恵まれました。この滞在は書物にはない本物の日本を知る有意義なものとなりました。日常生活に触れながら、彼らの習慣、人々の心配事、平凡な出来事等までも新鮮なものとして映りました。
現代日本は生活水準の高い国といわれます。それは東京のような大都会を例に取るまでもなく、溢れかえる人々、騒音に囲まれた街、地下鉄に押し込められた労働者たち。高層建築の中を歩いているだけで私たちは迷子になってしまったようで、何か疲労感さえ感じてしまいます。そんな中でも一つ裏道に入ると伝統的なお茶屋とか昔ながらの商店を発見することが出来ます。こうした店に入るとさっきまでの都会の雰囲気とは隔離された一種の独特な雰囲気を感じます。ただし、これらは現代日本の一面ではあるけれど、「本物日本」と呼ぶことができるのでしょうか?
日本の伝統文化的な面を探るには、京都が最もふさわしいと思われます。京都では何処に行っても歴史的な寺社、庭園、着物を着ている女性なんかにも出会えます。残念ながら古都というイメージよりは観光地化してしまっていることは否定できません。それでも生活水準のみが先行してしまった大都会より、こういう日本の姿の方が私にとっては刺激的です。京都のように歴史的建造物や文化伝統が保存されている街では、現代にありながらも、その価値観は今日も受け継がれているといえるのではないでしょうか?
日本滞在に関するすべての体験や感想は語り尽くせるものではありません。ただ、私は一つのことがいえるのではないかと思います。それは、冒頭でも挙げた日本の2面性(経済大国としての日本と長い歴史をもつ伝統文化)は、お互いが個々に独立して存在していて接点がないようにも見えますが、実際には密接な関係があるように思います。経済大国としての日本も、実は伝統文化や歴史という下地の上に成り立っているといっても過言ではないのでしょうか?それを具体的に説明することは今のところまだできません。今後の課題にしたいと思います。
私の「本物日本」の模索はまだまだ続くでしょう。
Anna Benko
(写真はk-kabegami.comのものです)