ポーランドはシェンゲン協定に加盟しているので、直接シェンゲン領域外から(へ)出入国する以外は、空港などでのパスポートコントロールは行われません。日本から(へ)の出入国の際も、現在直行便が飛んでいないので、出入国審査は途中の経由地(乗換地)で行われます。シェンゲン領域外から(へ)ポーランドに直接出入国する場合は発着空港、国境などで出入国審査が行われます。詳しくは「シェンゲン協定」を参考ください。
それでは空港や国境以外では、全くパスポートコントロールが行われないかというとそうではありません。逆にシェンゲン領域内では、空港や国境の出入国審査が撤廃された分、国内でのパスポートコントロールは意外に頻繁に行われています。これは不法滞在者をチェックするための抜き打ち検査的なもので、国境警備隊の管轄になっています。
よく検査を行っているのは長距離列車、主要幹線道路などです。長距離列車などでは、車掌さんの検札とは別にある駅から国境警備隊の職員が乗り込み、身分証明書=外国人はパスポートの提示が求められます。ここでは外国人を差別化しないようにポーランド人でも身分証明書を見せなければなりません。しかし、管轄は国境警備隊ですからチェックをしているのは合法的に入国しているか、超過滞在していないかという点です。
時には高速道路を走行中の大型バスを停車させ、乗客のパスポートチェックを行ったり、街中でパスポートの提示を求められることもあります。つまり、空港や国境で出入国審査がない分、いつでもどこでもパスポートコントロールを受ける可能性があるということです。特にポーランドはシェンゲン領域内及びEUの東端に位置し、領域外のウクライナ、ベラルーシ、ロシア(カリーニングラード州)と国境を接しています。このため、シェンゲン領域及びEUの国境警備に一段と力を入れており、EU機関の「欧州対外国境管理協力庁(通称Frontex)」の本部はワルシャワに設置されています。
さて、ここで問題となるのは、多くの日本人滞在者がパスポートや滞在許可証を常に持ち歩いていないということです。普通の旅行者の場合は、パスポートを提示し、シェンゲン領域内への入国スタンプなどからオーバーステイなどをしていないかチェックを受けます。滞在許可証の発行を受けている場合は、許可証も掲示しなければなりません。国内だから大丈夫と思っていても、合法的に滞在していることが証明されなくてはなりません。また、長期滞在者の場合はシェンゲン領域内の出入国時にスタンプを押されないことが多く、滞在許可証をもっていないとオーバーステイと見なされることがあります。
合法的な滞在が証明できないとどうなるか?最悪、証明されるまで収監(最長48時間)、国外追放措置が取られることがあります(事実、収監された例があります)。ここでいう証明は、滞在許可証の実物を見せなければならないということです。これが居住地の街中なら、国境警備隊員と一緒に自宅に行き、許可証を見せることで開放されることもありますが、地方や国外である場合、現物が到着するまで拘束されることになってしまいます。話のわかる担当官であれば、居住地の警備隊と連絡を取ったり、外国人局に照会するというケースもあるようですが、それにしても証明されるまで身柄を拘束されることには変わりありません。
このようなケースの場合、居住国や滞在国の日本大使館に連絡しても埒が明きません。大使館では日本国籍、つまり日本人であることは証明してくれますが、オーバーステイしていないか、滞在許可証を受けているかの証明は出来ないからです。よってこのようなトラブルに巻き込まれないためには、パスポートや滞在許可証は常に携帯しておく必要があります。ただし、紛失や盗難を防ぐために充分な対策も必要ですので注意してください。
ちなみに国境警備隊はポーランド語で「スタラッシュ・グラニッチナ(Straż Graniczna)」、緑色の制服で、車も緑色。車の運転中に警察だと思って止まったら国境警備隊だったということもあります。写真は迷彩服で拳銃も所持していますが、あくまでもパスポートコントロールなので特に怖がる必要はありません。