月をぬすんだ双子

今日は、ポーランドの古い映画を紹介します。タイトルは『月をぬすんだ双子(原題:O dwóch takich, co ukradli księżyc)』、主演は後に政治家となるカチンスキ(Kaczyński)兄弟です。1962年に制作された映画で、コルネル・マクシンスキ(Kornel Makuszyński)という児童文学作家の童話を基に作られました。ポーランドでは知らない子どもはいないといわれているくらい有名な映画です。

舞台はザピチェクという架空の村。そこにヤツェクとプラツェク(プラツェクはポーランド語でパイの意味)という名前の双子がいました。食いしん坊で怠け者の2人は、両親の手伝いもせず、学校でも授業の邪魔をしてばかり。そんな2人はある日、金でできた月を売れば一生働かなくて済むと考え、月を盗みに行きます。道中で色々な人たちと出会い、さらには危険な目にも遭い、最後には本当に大切なものに気付くという冒険ファンタジー映画です。

この映画が制作された1962年はまだCGが無かった時代。特撮を駆使して作られた映像は、今観るとその独特の手作り感が逆に新鮮に見えます。『オズの魔法使(1939)』や『ネバーエンディングストーリー(1984)』のようなCG無しで作られた冒険映画にも似た雰囲気があるかもしれません。ストーリーは単純ではあるものの、舞台セットがなかなか凝っていて遊び心があり、大人が観ても楽しめます。

主役の双子を演じたカチンスキ兄弟は当時13歳でした。映画の中の役柄と同じく、二人は一卵性双生児で見た目もそっくり。そして、後に二人そろって政界で活躍することになります。二人は2001年に現在の与党である「法と正義(Prawo i Sprawiedliwość)」を創設します。兄のヤロスワフ(Jarosław)は2006~2007年に首相を、弟のレフ(Lech)は2005~2010年まで大統領を務めました。残念ながら、弟のレフは2010年にカティンの森事件追悼70周年記念式典のためにロシアに向かう途中、航空事故で帰らぬ人となってしまいました。兄のヤロスワフは、2020年現在も「法と正義」の党首として政界に君臨しています。