毎年1月のある日曜日に町を歩くと、コートや帽子に赤いハートシールを貼って歩く人をたびたび目にします。それだけではなく、町のいたるところが赤いハートで埋め尽くされます。一体これは何なのでしょうか?
これはWielka Orkiestra Świątecznej Pomoocy(ヴィエルカ・オルキェストラ・シフィヨンテチネイ・ポモツィ – 略してWOŚP)というポーランドのチャリティ財団が、ポーランド全土で行っているイベントの一環です。毎年1月の第2日曜日はWOŚPファイナルと呼ばれ、たくさんのボランティアたちが町で募金を募ります。募金をすると赤いハートのシールを1枚もらえるという仕組み。夜は有名アーティストが多く出演するコンサートが各地で開かれ、イベントはクライマックスを迎えます。
町での募金以外にもインターネットオークションがあり、芸能人やスポーツ選手の私物のほか、一般の人が出品したオークションで購入することで募金になる、という仕組みになっています。今年もオークションにはテニスのイガ・シフィヨンテク選手(2022年の全仏オープンとUSオープンで使用したラケットと2023年全仏オープン初戦の招待状)や「市民プラットフォーム」党党首で元欧州連合理事会議長のドナルド・トゥスク氏(地元グダンスクで一緒に散歩&昼食)、ワルシャワ市長ラファウ・チャスコフスキ氏(市長が司式者として新郎新婦に結婚式を執り行う)をはじめとし、多くの人が参加しています。
今年で31回目を迎えるこのイベントは、イエジィ・オフシャック(Jerzy Owsiak)氏というラジオDJが中心になって1993年に設立した財団が行っているもので、重病・難病の子供たちの治療や病状回復の援助を目的としています。設立のきっかけは、ワルシャワ小児病院の設備不足に悩む心臓外科医たちが当時オフシャック氏がDJをしていたラジオ番組に出演し、リスナーに募金を呼びかけたところから始まりました。この時に集まった募金は約242万PLN(約7260万円)にも達し、小児病院で必要だった設備のほかにも、全国の10の小児心臓外科へ必要設備を寄贈することができました。それから30年、WOŚPが集めたお金で購入された2万以上の最新の医療機器はポーランド各地の病院に寄贈され、小さな子供たちの命を救っています。2013年からは子供達のためだけではなく、高齢者医療にも焦点が当てられています。2022年に集まった金額はなんと合計約2億2400万ズウォティ(日本円で約67億2000万円)で、過去最高額となったと発表されています。
募金の目的にも毎年テーマがあります。2023年は「敗血症に勝ちたい!(Chcemy wygrać sepsą!)」となっており、集まった募金で敗血症の診断に役立つ医療機器を購入し、国内の病院に寄付する予定だそうです。
このWOŚPの活動について、「左翼の活動」「集まった募金を着服しているのではないか」など批判的な意見も出ました。これに対しオフシャック氏は、集まった募金の92%はチャリティ目的に、8%は経費となっているとのポーランド労働省によるレポートを発表し、反論しています。
2021年からはコロナウイルスの影響から、ファイナルは恒例の1月第2日曜ではなく1月最終日曜日に行われているほか、公式サイトやSMSだけではなく、Zrzutka.pl, Siepomaga.pl, Wspieram.toの各ページからも募金を行うことが出来るようになりました。
詳細については財団公式ページをご覧ください。
(写真は財団公式フェイスブックページからのものです)